title_gif 

Topics 「Happy Halloween !」 2007/10/31
11ヶ月間何とか続けてきましたが今日で終了します。今まで楽しみに見てくださった方々、ありがとうございました。いやいや、11月1日より新ブログへ移行します。うれしいことに今度は写真をクリックするとドドーンと大きくなります。タイトルは「風翔記」です。>>「風翔記」へ進む>>
Topics 「當一笑」 2007/10/07
ようやっと体調も戻ってきましたが、とうとう家人全員に私が日本から運んできた風邪菌をうつす羽目になってしまいました。またまた肩身の狭い思いをしております。しかしながらいい事もありました。6月に始めた「書とお散歩」なる講習会も昨日無事に終了することが出来たのです。各1時間半の全5回。しめて7時間半しゃべり続けたわけで今回のために作ったノートも随分厚くなりました。そして新発見もありました。今までなんとなく書いていた王鐸の臨書作品に実に数多くの脱字を発見したのです。王鐸自身少々ではない脱字に一笑してくださいと書き記す作まで出てきてもうたいへん。このことは元帖と照らし合わせなくては気がつかなかったことです。ということで私自身、本当に有意義であったと喜んでいます。気がつけば外界はすっかり秋支度。家の前の公園も印象派の絵画のようにお色直しが終わったようです。
Topics 「風邪ひきとハーレー」 2007/09/23
私の記憶では?今年初めて風邪をひいた。灼熱の日本から気候の上でもすっかり秋真只中、寒いほどのシアトルでは体がびっくりしたのだろう。ひいてしまったのだからしかたない。2005年の12月1日に煙草を止めてからはおかげさまでひどい風邪はひかなくなった。煙草を止めたら食事がおいしく、半年で見事に痛風になってしまった。医者からは減量と食事療法を薦められたものの忙しさにかまけてほっておいた。が、がである。さすがに今月に入って体がきつくひざが痛くなってしまった。ということで只今食事療養中!あえて公言することで持続しようという魂胆です。今日は3週間ぶりの休日。大好きなフェリーに乗ってWhidbey Island に行ったもののすさまじいほどのハーレーに出会いびっくり。しめて500台以上とすれ違ったにもかかわらず、島では警察車両(BMW)には1台も会わなかった。しょせんアメリカではビーマーは肩身の狭い思いをする運命か。
Topics 「猛暑日」 2007/09/18
先週末講習会のため日本へ、いや正確には肥前の国へ行って来た。9月も半ばを迎え秋らしい日本を期待しての旅であったが見事に裏切られた。16日の肥前の国は35度の猛暑日。とうに立秋は過ぎたというのに恐ろしいほどの湿気を含んだ熱風が迎えてくれた。一番心配した台風11号は東に向きを変え隣国へ被害をもたらしたらしい。前回(7月)といい今回といい空を飛ぶことが多い私にとって、日本の夏は暑さと共に台風情報にも敏感でなくてはならない。しかし台風の影響か(?)雲は様々な形で空を彷徨っていて霊峰富士は絶好の被写体になってくれた。が、機中では安全のためとはいえ席に拘束される時間が多すぎる。気流が悪い中で筆を持ったとしたら黄庭堅のようなはらいになって面白いのになあと思った。
Topics 「パンドラの匣」 2007/09/08
人生波瀾などないほうが良いに決まっている。波乱万丈の人生など誰が好き好んで選ぶであろうか。
しかし平凡な生活では退化していく場合も中にはあるのではないか。自分がそうだと自慢げに言うつもりはないのだが、人と同じではつまらないと考えている事は事実であり、いかに自分独自の表現ができるかが我々には大事であると私は思う。上手に書きたいとの憧れから書学は始まる。そして多くの時間を古典や師の臨書に費やし、いつの日かそれに邂逅できれば幸せである。先日の講習会で話したことだが、いったい黄山谷は波形のはらいをつかむまでどれくらいの酒を飲んだのであろうか。「集古字」とあだ名された元章はどれだけの古典を書き狂ったのか。そっと覗いてみたいものだ。はたして自分には暗雲の先の陽光が見えるであろうか。
Topics 「しあとる晩夏」 2007/08/28
昨日、念願であったシアトルの夏の夕やけに逢いに行った。いつでも行けるからと後回しにしていたらいつの間にか17年という年月が経っていた。行って気が付いた。もっと早く来るべきだったと。シアトル美術館がウォーターフロントに造った彫刻の公園は夕暮れの散歩にはうってつけであった。そして海を挟んでの夕日の赤は最高!となるはずだったのだが、、残念ながらそれは次回にという結果に。しかしながらきらめく海面と山は立派でそして悲しげであった。この大自然と一人で対峙している青年を見つけた時、迷わずシャッターを押していた。
中国では渓谷で舟遊びをしながら筆を持ったという。米元章の書に船中での作が多いのはやはり旅好きであったからか。何時の日かここに船を浮かべて書作に励みたいものである。
Topics 「墨は夏が苦手?」 2007/08/15
今日は新しく墨を磨るのは止めてあえて賞味期限いっぱいの「大好山水」を使った。先週少々多めに磨っていたので残っていたのだ。糸引きが無いのでいつもの「魔法」は使わずそのまま書いてみた。思ったとおりなんともいえない幻想的な色彩を放った。しかし筆で文字を押さえ込もうとすると線が浮く。こういう時は意識して飄逸さを狙ったほうがいい。随分楽しんだがさすがに室温と同じになった頃には漢字を書ける墨ではなくなってしまった。書家は道具全てをコントロールできるものではない。新品の羊毫はあたりが出るまでに一月はかかるし、紙は気候に左右されやすい。ましてや墨は魔物である。同じように磨ったつもりでも毎回ちょっとずつ違う。それらがうまく一つになった時、そういう時に早く出会いたいものだ。先日機上で夕日を見た。この赤も刻々と変化した。私は夏になるとこれを見たさであえて窓側の席を予約する。
Topics 「Happy one hundred !!!!!!」 2007/08/08
「私の父は軍人で・・・1922年、中学生の時にアメリカへまいりました」とご自分の100年の歴史を快活にお話された。「多くの方に支えられここまで生きてまいりました」いやいやそうかもしれないが日本人が少なかったあの頃UCLAを卒業された女史の苦労は計り知れない。後で知ったのだが専攻はフランス語だったそうだ。今回の祝宴には多くの方々にご協力いただいた。 「I love Sushi-Lake Bellevue」総料理長N氏。出席者の人種、年齢や性別のデータをもとに最高のおもてなしを提供してくださった。正真正銘のプロである。心からお礼を申し上げたい。後日、「お世話になりました。家中バラの香りです。百本の薔薇はみなしっかり咲いていますよ」と連絡をいただいた。
Topics 「明日やろうは馬鹿やろう 実践編」 2007/07/26
昨年10月、故郷佐賀での個展の際、うれしいことに何点か注文をいただいた。ありがたいことである。ただ、「その展示作品と同じものを」という難題であったが故、後で後でと先延ばしにしてきた。一瞬の気持ちの高ぶりを作品にぶつける自分にとってはつらい試練である。が、「明日やろうは馬鹿やろう」ということで、1年を目前にして昨日やっとのことで完成しました。ただし、蓮の墨画だけは構成を新たにまるっきり違う作品になりましたが。(写真は部分拡大) やれやれほっとしましたぞ。やはり4年物の宿墨はいい味出しますな。なんともいえない臭い付きではありますが。
おっと、臭いは1ヶ月ほどで消えます。心配はご無用です。
Topics 「明日やろうは馬鹿やろう」 2007/07/25
今年で百寿を迎えるメンバーを祝し、来月食事会が催されることになった。正真正銘1907年生まれである。メンバーであると言うことからして現役の書道愛好家である。最近になって少し足を悪くされたが昨日もお稽古におこしで堂々たる半切作品を見せてもらった。10年ほど前に入会された時のことを思い出した。「書道はずっとしたかったのです。最近漸く仕事をやめまして時間がとれるようになりました。これで老後の楽しみが出来ました」と、ニコニコされていた。もう若くないからとまだまだ若いを上手に使い分ける我々ミドルエイジにとってはいい訳無用の大先輩である。「明日やろうは馬鹿やろう」どこかで聞いた台詞だが限られた時間を精一杯楽しみたいものである。いつの間にか庭先にコスモスの花が咲き始めた。もう後ひと月でシアトルには秋がやってくる。
Topics 「紫陽花」 2007/07/16
今回の3日間の滞在は初日と2日目は台風、そして帰る3日目には地震というまさに天災続きであった。よくも無事に戻ってこられたものだ。滞在を東京だけにして本当に良かった。例年だと九州に足を伸ばしていたのだが・・幸いした。飛行機も新幹線も15日は止まっていた。と言うことで帰ってきたシアトル。ほんの数日の留守中に庭の紫陽花が元気に咲き始めていた。冬場は枯れ木のように茶色くなるこの幹も今では碧々と茂りここぞとばかり精気を放つ。その姿はなんとも気高く美しい。そういえば国立新美術館の近くの路地にも咲いていた。雨に濡れた紫陽花を見るとおいしそうで思わず食べてしまいたいと私は思う。人間も1年に1度は最高の時を与えられるべきだと花に嫉妬した。今年落選し悔しい思いをした方々、私と一緒にまた目標に向かって歩き始めよう。ところで井上靖は【わが一期一会】にて「自分にとって紫陽花は陰気な花」であると書いている。この梅雨時に咲かねばならぬ運命と結び付けている。が、梅雨が無いシアトルでは説得力に欠ける。
Topics 「国立新美術館」 2007/07/14
東京での毎日書道展は今年から2箇所で開催されることとなり台風にともなう暴風雨の中、新設の国立新美術館に行ってきた。設計者K氏を始めいろいろな意味で話題多き美術館である。しかしながら学生時代にも一度も行ったことがない六本木。メトロ地図片手に新宿から乗りました大江戸線。そこでは小さな電車にまずは驚き、次に黒とゴールドを基調とした六本木駅の洒落たデザインに感心した。ただし駅は地底42mにあるため、外に出るには恐ろしい勾配のエスカレーター4基を乗り継がなくてはならなかった。この大江戸線、新線のため線名を一般公募しほぼ決定していた名前をI都知事が発表直前でひっくり返したことは有名である。昨日までの友が戦友とはよく言ったものだ。まるで王鐸と傅山のようである。美術館自体はとても美しく、開放されたロビーの大空間は多くの人に好まれる造りであった。ただし、日本建築的要素をふんだんに取り入れた正倉院のような外観のほうがよかったと思うのは私だけ?それから毎日展の黄色いポスターはあまりに野暮ったくここには不似合いであった。帰りに食べたミッドタウン西交差点「まぐろ人」のチラシ寿司はお勧めです。
Topics 「be in a fog」 2007/07/06
師を亡くしてからの12年間、懸命に古典を模索し、時には師の作品集を紐解き臨書してきた。いや、つもりであった。ふと七言絶句三行連綿体がないかと探してみると・・・なんと偶然であろうか、現在の私の年の頃の作品の中にいくつか見ることが出来た。ここに半切に近い紙に書かれた作品を掲載した。よく見ていただきたい。この40代中期の作品には多くの古典が垣間見られる。王鐸・傅山、そして許友。しかし先生の50代の作品にはそれが見えない。50にして早くも苦悩から解脱したと考えるべきか。しかし、この作品の筆速はすさまじい。そしてそこには堂々たる主役が鎮座している。わたしももう少しなどど言わず、少し腰を落ち着け追求してみるべきか、否か。
Topics 「呼吸困難」 2007/06/26
現在、七言絶句、半切三行連綿に挑戦中である。王鐸作品の中で七言絶句を探してみるに3行作品が1点あった。が、それは全紙に書いたもので今回の趣旨にはそぐわない。ほかに半切2行作品があったがこれも×。さすがの王鐸もあえて避けていたように思えた。自分で書いてみて気付いたことは、1.いつもの呼吸では遅すぎる 2.よって滝を流れ落ちる水の如く速く激しく書く 3.しかも岩にぶつかった水が一瞬二手に分かれるように文字の流れにも変化をつける。 いやいや、落ち着いて書ける題材ではない。と言うか生半可な気持ちでは恐ろしくて書けません。本当に息が詰まります。今日の写真は近所に停まっていたレトロな消防車。この車も現役のころは緊迫した現場で活躍していたであろう。 七言絶句を書いていると時々呼吸を止めているらしい。ほどほどにしなくては。
Topics 「Microsoft Falls」 2007/06/19
5月に霜が降りるシアトルにも徐々にではあるが夏が近づいてきた。高緯度であるが故、日没は遅く空が真っ暗になるのは午後の10時。この時期になるとシアトルっ子は宵っ張りになる。夏時間も手伝ってか会社が終わってから日が暮れるまでの5時間を皆がおもいおもいに楽しんでいる。わたしも今日は被写体を求めカメラを持ってお散歩に。途中、馬のトレイルで会った犬のお散歩中のご夫人の強いお勧めで近所のマイクロソフトのキャンパスまで足を伸ばしてみた。17年も住んでいながら行ったことがなかったそこにはなんと東洋を意識して造られた庭と人工の滝があって正直びっくりした。日々この中でコンピューターは進化しているらしい。道具の進化といえばこのカメラ、手振れ防止機能なるものが付いていて焦点距離200mm、10分の1秒のスローシャッターでもぶれることなく写真が撮れました。三脚いらずのこのカメラ、当分散歩のお供になりそうです。そういえば先述の七言絶句、なかなかの曲者です。
Topics 「the Venus de Milo」 2007/06/08
半切を使って作品を作る場合、書く題材が決まっている時はいいが、まだの時はまず形態を決める。つまり1行、2行そして3行のどれにするかを選択する。そして3行の場合は連綿だと40文字から56文字、単体だと七言絶句の中から私は選ぶ。以前、幾度もこの28文字を2行連綿、3行連綿で表現しようと試みるにことごとく玉砕した。そして半切に限ってではあるが28文字は3行単体が似合うという結論に達した。これは今でも変わっていない。昨日、まるでビーナスのようであるがゆえに意識して被写体としなかったカラーリリーに挑戦してみた。上から下からそして斜めからと、どこをとっても究極の美しさを持つこの花はとらえどころが無く逃げていたのだ。全体を入れるか思い切って部分を切り取るかさんざん悩んで決めた最後の構図がこのショット、真横からの“イナバウアー”。ちょっと古かった?近々また七言絶句にチャレンジしてみるとしよう。
Topics 「太宗はたいそうお好き?」 2007/06/02
いやいやこのタイトルだけでは何のことやら?ではあるが、今日の【書とお散歩】の講義を受けた16人の受講者は「そうそう、だから唐の三大家は時代の寵児である」とすぐさま続いてほしいものだ。天子として生を受けた唐の第二代皇帝太宗のことである。趣味に徹し、そして歴史上の人となった。彼が設けた弘文館があったからこそ王羲之の臨本が生まれた。書道好きが高じて収集した王羲之の真蹟ともどもあの世に行ったらしいが、許そう。たとえ本物があったとして1400年後の現在まで無事に伝わったとは考えにくい。7年程前であろうか、シアトルアジア美術館で見た王羲之の行穣帖もこの弘文館で作られた双鉤填墨による複製である。確か高校の教科書で見たものと同じとたいそう興奮した記憶が蘇った。 太宗といえば宋の太宗も有名である。この話は来月までのお楽しみ。複雑な結体の花を咲かせるオダマキ。欧陽詢の代表作「九成宮醴泉銘」も気を抜くと筆が流れてしまう複雑なバランスを持つ。
Topics 「聴無聲」 2007/05/19
恒例の春墨展のため1年ぶりに銀座に行ってきた。もちろん自分の作品を出展しているからではあるが師の遺作に会うという大義のためである。それは叢書で書かれた良寛の詩であった。この詩を読んでみると先生の「考えると難しくなる。−中略− 書くしかない。」の言葉の源流であることに気づいた。良寛はここで「古い見方にこだわるな、新奇を追うのもやめにしろ、ただ坐って坐って窮め抜け」と言っている。紙に向かい遮二無二書かれていた師がそこにいた。そしてそれはずばり私の出展作「聴無聲」としっかりリンクしていることに気がついた。何時に無く上機嫌であったのはそのためで誰にも言わず一人で喜んでいた。
Topics 「卯の刻の散歩」 2007/05/18
全国でも有名な桜の名所である北の城下町へ出向いた。今年の桜のピークは5月の連休であったと、そして天候にも恵まれ大勢の人出であったと聞いていたのだが、うれしいことに遅咲きの普賢象の大木がまだ私を待っていてくれた。生憎の雨模様ではあったが薄明るくなるまで持して宿から傘を借り出かけた甲斐があった。7年程前になろうか、この町と師匠とのえにしを聞き年に一度は訪れるようになった素敵な街である。満開の時の写真は雑誌でよく見かけるものの午前5時の雨中の桜もまたおつであった。春は「鷹岡城の桜」、夏は「ねぷた」秋は「岩木山」そして豪雪の冬の楽しみは銘酒「じょっぱり」。情熱的で気風が良い人々があふれる街である。そして同時刻、北海道では史上二番目となる遅い春雪が桜に積もったという映像が流れていた。私のほうも記録的な20時間という短い滞在であったが、無事岩木山を見ながら筆を持つという第一の願いをかなえ、ふたたび機中の人となった。
Topics 「春爛漫」 2007/05/15
前回の「ハート」形の葉についてはすぐに何人かの方にお教えいただいた。感謝、感謝。しかしここでの答えは内緒。もちろんあの木は「MATSU」ではなかったし、特に珍しい木でもなくシアトルセンターに行けば大木がたくさんあると聞いた。いやー、この世の中まだまだ知らないことだらけである。 昨夜遅くにLAからシアトルに戻ったのだが明日からまた日本である。さすがに四十も半ばに差し掛かると以前のようには走れなくなったが、まだまだ手ぶらで歩ける身分ではない。これからは自分自身ともっと上手に付き合い少しでも多くのことを知りたいと思った。今朝、庭の畑に苺の花を見つけた。この花が実りそしておいしい赤い苺になると思ったらうれしくなった。自分では何もしないのに楽しみだけは撮って食べての2倍である。そして明後日には一面の林檎の花を見ることになる。
Topics 「おそまつ」 2007/05/09
課題を1回でパスすることに全情熱を傾け、「合格!」の言葉を自分の評価とする人。朱を入れてもらうことを望み、より高度な作品制作を希望する人。必ず前口上を述べる人。など様々であるが褒めてもらった時の笑顔はみな一様に嬉しそうである。満面の笑顔を見るとこちらまで心が華やぐ。そもそも書道とは心の情操である。心を無にし、己と真向かうことが出来る。ましてや己のエゴを持ってしてはその書は醜いものになってしまう。
何度書き直してもそれを超えるものが出来なかったと王羲之は「蘭亭序」を残した。先述の私の毎日展作品であるが最初のお気に入りは繰り返しの文字が1文字抜けていた。よって書き直したのだが、やはり最初のそれを超えることが出来なかった。仕方なく横に小さく書き足した。悔しかったがすっきりした。作品は日ごろの練習とは違う。技術は繰り返し鍛錬ありて会得するものだが、作品は心を表現するものと思う。技術をひけらかす発表の場ではない。シアトルは最近めっきり日長になってきた。午後9時を過ぎても薄明るい。と言う訳でお散歩中に見つけた面白い「ハート」の葉と花の写真。この木の主が出できて言うには「この木は日本のMATSUと言うんじゃ、珍しいだろ」
Topics 「二次被害」 2007/05/05
漸く毎日書道展の作品を書き上げた。いつものように締め切り前日である。といってもFedexで送れば後2日余裕が出来るが。ここ5年ほど大字作品を発表していたので今年は7言律詩と決めていた。56文字の世界は40文字を過ぎてからが勝負どころである。ずばり3行目である。その3行目が私の場合2行目で弾けた分だけ気が抜けてしまう。最後の結句などはもうくたくたである。今回、何時にも増して墨の状態が良く、気がつくと朝になってしまっていた。もちろん部屋は紙だらけ。紙はちょっと贅沢に尺八屏綿料綿連。一反50枚を使い切ってしまった。と、言っても途中から2枚重ねの贅沢をしてみたので実質30枚ほどか。問屋さんの話では4月から仕入れ価格が1割ほど上がったと言う。昨今のガソリンの上昇率から比べたら可愛いものだ。15年前のアメリカのガソリン価格は1ガロン1ドル前後だった。今はと言えば今日現在で1ガロン3ドル50セント。なんと3.5倍である。今後のことを見据えて今のうち100反ほどまとめ買いをしたいところだ。
Topics 「Whitman College」 2007/04/25
「先生、お先に失礼します」と頭を下げて教室を後にする生徒たち。美しい日本語を一生懸命話そうと努力しているのはWhitman大学でT教授が率いる日本語学科の生徒たち。彼らには常に「心をこめて美しく」と教えている。Whitmanとのお付き合いはかれこれ18年にもなる。考えてみるとシアトルよりも長い。午後の東洋美術史のクラスでは書風の変遷と言うテーマで「王羲之とその派生」に着目しいつもの実演と講義を行った。毎度のことだが行き当たりばったりの授業である。出たとこ勝負で恐縮であるがこれが私流。ひらめきがない時は散々である。今回はまずまずか。 とっつきは王羲之。そして米元章、王鐸と順に半切に臨書。用筆法と筆速を見分してみた。三者はそれぞれ約500年の開きがありなかなか面白い題材だったと思う。最後には自分の書の基軸にまで言及することとなり古典の重要性を力説していた。書生にとって書くことは一番大事である。しかしたまには書の歴史を紐解いてみてほしい。よって早速ではあるが6月から月に1度「書とお散歩」と題した講座を開くことにした。ノートと鉛筆のみ持参の講義形式である。興味ある方はぜひ参加していただきたい。
Topics 「桜祭」 2007/04/22
今年は天候にも恵まれ、大勢の人出を記録した第32回シアトル桜祭・日本文化祭は22日、3日間の予定を無事終了した。我々(明藤書道会)も一参加団体として展示および体験ブースを展開した。なんと500枚用意した一人一枚限定の半紙が無くなった。ものすごい人気である。世界一書きにくい筆に果敢に挑戦し、その証を高く掲げて喜ぶ者、こんなはずではなかったと意気消沈する二人づれなどいろんな人種の方々がいらっしゃいました。いやいや真剣なまなざしはどなたも素敵でしたよ。 ところで桜はほっとくと70〜80年でその一生を終えるらしい。まるで人間と同じではないか。しかし手を入れる(多くの人力と多大な費用がかかる)ことによって再生する。ほんとうに羨ましい限りである。ちょうど18年前の1999年4月、明石春浦先生と共に初めてこの桜祭に日本から参加した時のことを思い出した。その後年に2回は渡米し精力的に書を紹介された。あの時の先生の目にはすでに世界が見えていたのだと思う。どこからか「ぐずぐずしている暇は無いぞ、藤井」と先生の声がした。「はい、了解です。」
Topics 「無量寿」 2007/04/15
師匠の法要のため小江戸川越に行ってきた。20年以上も前になるが一時期私の住民票があった街である。日曜日ともあって見物人が多く、私を乗せた車は狭い道をクラクションを鳴らしながら走って行った。師匠が眠る「養寿院」は鰻屋の真向かいにあった。その鰻屋の軒先の水路には鯉が泳ぎ、多くの人が道路まで順番待ちの列を作っていた。そういえば、葬儀の際は川越駅の案内係としてとうとう斎場には行けずじまいであったから十三年目にして初めての墓参りである。本堂右手の床の間には「無量寿」が掛けてあり久しぶりに師に会えたようでうれしかった。しかし、「無量寿」とは眞逆の悔いの残る短い人生であった師の書に接し、健康の大切さを強く感じた。「思い残すことはない」人生を過ごすには66年はあまりにも短い。壮絶な小町の「我れ死なば 焼くな埋むな野に晒せ 痩せたる犬の腹肥やせ」 の歌ように、一生を悔いなく使い切った書を私は書いてみたい。
Topics 「逆光と逆筆」 2007/04/11
初めてカメラを手にしたのは小学生の頃。その時はただ太陽に背を向けて構えて撮るんだと教えられた。筆も同じ。進む方向斜め45度に入りなさいと。まさか今となっては逆光、逆筆を多用するとは思いもしなかった。初めて羊毫を使った大学1年生の時、宮崎出身の先輩から「これは魔法の筆だ。その魔法をうまく使うには逆筆で書くこと」と教えられた。あれから25年、見事にその魔法の虜になってしまった私がいる。今日は久しぶりの青空の下、気持ちよく真っ直ぐ天を向いているチューリップを逆光で撮ってみた。透過色がなんとも美しい。  明日から日本。筆の魔術師明石春浦がこの世を去って12年、十三回忌法要のためである。『ただ書くしかない』、師匠の言葉がまた頭をよぎる。
Topics 「主役は何処」 2007/04/02
ワシントン大学の桜に見放され、九州の桜も未だ1分咲きと今年はとことん桜には縁が無いものだとあきらめていた矢先、隣家のソメイヨシノがほころび始めた。ここぞとばかり楽しんで撮った中の1枚である。この木はまだ2mほどの小ぶりではあるがとても美しい花を咲かせていた。桜の花がたがいに見つめ合っているようでこの部分だけでも何枚も撮ってしまった。ワシントン大学の桜は巨木がゆえにひいて撮ってばかりいたが、今回は切り取り方を工夫し、久しぶりに前ボケも入れてみた。どうやら私はこのような絵が好きらしい。楷書や隷書作品のように一つ一つが主張する書に対し、行草連綿体が放つべき物語に似ている。特に人の目を1箇所に釘付けにする3行作品に。全てを頑張りすぎると主役がかすむ。なんていいながらこの写真実はちょっとピンボケです。
Topics 「副島蒼海」 2007/03/25
先日、ウイットマン大学のT教授夫人から「佐賀城下ひなまつり」が歴史民俗館で開催されているとの旨を伺い、早速朝一番で出向いた。歴史民俗館なるものすら知る由も無く、初めて行ったのだがそこは旧古賀銀行、旧三省銀行などの旧家を保存したものであった。鍋島家支藩小城鍋島家に伝承したと言う高さ40cm程の大きな古今雛が正面に展示され過去の栄華を垣間見ることが出来た。しかしながら私の興味は人形ではない。旧古賀家の正面には先述の蒼海の扁額があり、いきなりの出会いに度肝を抜かれた。奥座敷には赤毛氈の上に投扇興や雛人形の展示がされていたが、それよりも何よりも床の間の大木喬任の書、襖の桟上の山岡鐵舟の扁額などを見つけ私の興奮は最高潮に。数え切れない雛人形群の写真撮影は禁止されていたもののそれ以外はOKという係りの許可のもと撮った写真がこれ。「共空海濶−空も海も共に果てしなく広い」、世界へ目を向けた古賀銀行頭取古賀善平宅にぴったりの蒼海の書と言える。1月の鍋島直正に続き幕末〜明治の佐賀人の熱い力を感じた故郷の旅であった。しかし副島蒼海の書はスケールが大きい。大きすぎるゆえに好き嫌いが分かれる。私は楊柳亭(佐賀市松原)にある「大禧」に出会った13年前から結体と終筆の妙に心奪われたひとりである。やはり美術館で見るよりも生活の中で見る書のほうが作者の温かみを感じる。
Topics 「BIG BIRD」 2007/03/24
今年2回目の東京国際空港(通称BIG BIRD)。紛らわしいが成田ではなく羽田空港である。今回も羽田―福岡。しかし日本国内の空の旅は実に快適である。アメリカから帰るとまるで殿様になったかと錯覚するほどのおもてなしがそこにある。働いている方々の温かい心配りが溢れている。日本のサービスは世界一であると私は思う。事が円滑に進むよう願う日本人には顔の後ろにも目があるようだ。それは「心の目」とでも言うべきか。常に複数のことを同時に処理しながらも心配りを忘れない、日本人が大切にするおもてなしである。そう、おもてなしと聞くと私は真っ先に床の間や玄関に掛ける軸や扁額を思い浮かべる。最近では常に同じものを掛けっぱなし、という家が多いようだが、本来はお招きする客人に合わせて掛け替えるものである。それから花、料理と続くわけだ。玄関を入るとまずは扁額が目に入る。そこにはおそらく2文字から5文字ほどのわかりやすい言葉がならんでいるはずである。今回の帰佐では副島種臣(蒼海)の4文字扁額に出会った。この話は次回。
Topics 「UW桜と大書源」 2007/03/18
K教授の開花情報では週の中ごろが見ごろとあったが残念ながら出張で留守をするため、雨が上がった午後キャンパスへ足を運んでみた。が、予想していたとはいえ人出の多さに辟易し、撮りたいという欲望が一瞬にして萎えてしまった。今年から夏時間が1ヶ月前倒しされ3月の第2日曜日から始まった。 1時間早くなるためひとけの無いUW桜はもう撮れないかもしれない。下は以前の写真。じっと日の出を待っていたころが懐かしい。日の出からの1時間が勝負だっただけに(光を待つと人が動き出す時間になってしまった)残念である。こうなったら桜の満開後に夏時間を始めるなんて宣言する大統領が出ることを望むしかないか。そういえば今日、日本から「大書源」4セット34kgが速達で届いた。通常の配達時間より1時間早く手元に届いたわけだが送料を見て倒れそうになった。気を取り直して付属のDVD字典を見て楽しむことにする。