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水急不流月

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「丁寧に、正しい姿勢で書きましょう」と、教室のあちらこちらに貼り紙をしているのだが、これに「ゆっくりと」を加えねばと思うようになった。以前はあまり気にかけることもなかったのだが、落ち着きがなく思慮に欠けるケースが最近目につく。聞いてみると学校では常に「早く、早く」と急きたてられているという。きめられた時間内で教科書をすべて網羅するには仕方がないのかもしれないが、結局最後には教師の満足感だけで、一番大切な生徒の頭にはなにも残らない。多少言い過ぎかもしれないが家庭でも同じ。見守ることを面倒くさがってすぐに手を貸してしまう。いや、そうでない根気強い方々が大半であるとは思うのだが。
中一の時、食塩水の問題が大好きな数学教師がいた。授業の最後はいつも食塩水の問題と向かい合った。そんな時いつも先生は楽しそうだった。引っ掛け問題から、難関校入試問題まで網羅された練習問題のおかげで私の高校入試も無事に終わった。今では私が家庭内数学担当大臣である。コンピューターを駆使した授業も否定はしないが、それよりも時代に流されない魂のこもった授業を願うのは老婆心か。「私が数学を嫌いでなくいられたのはあなたに教わったからです。ありがとうございました」、なんて書きながら名前が出てこない。年はとりたくないものだ。